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電子書籍名言・引用まとめ

この教官は正しい──がまた、完全にまちがってもいた。彼の観察は鋭く、事実に即している。教官が訓練生の操縦を誉めたときは次回にへたくそになり、叱ったときは次回にうまくなる。そこまでは正しい。だが、誉めるとへたになり、叱るとうまくなるという推論は、完全に的外れだ。教官が観察したのは「平均への回帰(regression to the mean)」として知られる現象で、この場合には訓練生の出来がランダムに変動しただけなのである。教官が訓練生を誉めるのは、当然ながら、訓練生が平均をかなり上回る腕前を見せたときだけである。だが訓練生は、たぶんそのときたまたまうまく操縦できただけだから、教官に誉められようがどうしようが、次にはそうはうまくいかない可能性が高い。同様に、教官が訓練生をどなりつけるのは、平均を大幅に下回るほど不出来だったときだけである。したがって教官が何もしなくても、次は多かれ少なかれましになる可能性が高い。つまりベテラン教官は、ランダム事象につきものの変動に因果関係を当てはめたわけである。

ファスト&スロー (上)

ダニエル カーネマン
村井 章子

Quotes List

エラーを取り上げるからといって人間の知性を過小評価するつもりは毛頭ない。

その結論が正しい可能性が高く、万一まちがいだった場合のコストが容認できる程度であって、かつ時間と労力の節約になるのであれば、結論に飛びつくのは効率的と言える。だが慣れていない状況であるとか、失敗のコストが高くつくとか、追加情報を集める時間がない場合などは、結論に飛びつくのは危険である。

ない。たくさんデートをした学生は、自分はなかなかしあわせじゃないか、と気づく。一方全然デートをしなかった学生は、自分は孤独でみんなに嫌われているのだと感じる。

あらゆることが、後知恵で見れば意味を持つ。だから金融評論家は毎晩、その日の出来事について説得力のある説明を披露できる。そして私たちは、今日後知恵で説明がつくなら昨日予測できたはずだ、という直感をどうしても拭い去ることができない。過去をわかっているという錯覚が、未来を予測できるという過剰な自信を生む。

認知科学者が近年強調するように、認知は身体化されている。あなたは身体で考えるのであって、脳だけで考えるわけではない

実験をさらに重ねた結果、被験者となった学部生の八九%が確率理論を無視した。そこで私たちは、統計学を専門に学んだ回答者ならましな結果が出るだろうと考え、スタンフォード経営大学院で意思決定科学コースに在籍する博士課程の大学院生を対象に同じ質問をした。全員が確率、統計、意思決定理論の上級課程を履修している。ところがその彼らの八五%が、リンダが「フェミニスト銀行員」である可能性を「銀行員」より上位にランクしたのである。私たちは唖然とした。

心理学者のポール・ブルームは、二〇〇五年にザ・アトランティック誌に発表した論文で、人間は物理的な因果関係と意志的な因果関係を区別するように生まれついており、ほぼ普遍的に宗教信仰が見られる理由はそれで説明できる、との刺激的な主張を披露した。「われわれは、基本的に物質世界を精神世界から切り離して理解する。魂のない肉体と肉体のない魂を思い浮かべられるのはこのためだ」。ブルームによれば、因果関係に二つのモードを想定しているからこそ、多くの宗教の中心をなす二つの信念が自然に受け入れられるのだという。この二つとは、「物理的な世界をつくった究極の原因は無形の神であること」「人間が生きている間は不死の魂が一時的に肉体を支配し、死んだ後は肉体を離れること」である。因果関係のこの二つのコンセプトは進化の過程で別々に形成され、宗教の原型をシステム1の構造に組み込んだ、とブルームは考えている。

一九八〇年代になると、ある単語に接したときには、その関連語が想起されやすくなるという明らかな変化が認められることがわかった。たとえば、「食べる」という単語を見たり聞いたりした後は、単語の穴埋め問題で“〝SO□P”〟と出されたときに、SOAP(石けん)よりSOUP(スープ)と答える確率が高まる。言うまでもなく、この逆も起こりうる。たとえば「洗う」という単語を見た後は、SOAPと答える確率が高まる。これを「プライミング効果(priming effect)」と呼び、「食べる」はSOUPのプライム(先行刺激)、「洗う」はSOAPのプライムであると言う。

私たちは、自分の理解の度合いを過大評価する一方で、多くの事象で偶然が果たす役割を過小評価する傾向にある。自信過剰になるのは、後知恵で過去の確実性を錯覚するからである。

私たちの大半は、ほとんどの時間、一貫した一つながりの思考を維持するにも、たまさかの複雑な思考に取り組むにも、セルフコントロールを必要とする。系統的な調査をしたわけではないが、タスクをひんぱんに切り替えたり、知的作業をスピードアップしたりするのは本質的に不快なことであり、人間は可能であればそれを避けるのではないかと思う。

一般市民にとっては明らかなある種の問題がそれ以外の人に無視される現象は、利用可能性ヒューリスティックで説明できるという。人間は記憶から容易に呼び出せる問題を相対的に重要だと評価する傾向があるが、この呼び出しやすさは、メディアに取り上げられるかどうかで決まってしまうことが多い。ひんぱんに報道される事柄は、他のことが消え失せたあとまで記憶に残る。その一方で、メディアが報道しようと考えるのは、一般市民が現在興味を持っているだろうと彼らが判断した事柄である。

「状況が手がかりを与える。この手がかりをもとに、専門家は記憶に蓄積されていた情報を呼び出す。そして情報が答を与えてくれるのだ。直感とは、認識以上でもなければ以下でもない(*9)」

これは、結婚が続くかどうかを予測する式である。 セックスの回数-|喧嘩の回数 あなたの計算結果がマイナスにならないことを祈っている

これらの発見から総じて言えるのは、お金という観念が個人主義のプライムになるということである。すなわち、他人と関わったり、他人に依存したり、他人の要求を受け入れたりするのをいやがる。

 ・統計学は、因果関係で説明できそうな観察結果を数多くもたらすが、統計学自体はそうした説明は行わない。現実の世界で見られる事実の多くは、標本抽出の偶然など、偶然の結果であることが多い。偶然の事象を因果関係で説明しようとすると、必ずまちがう。

この教官は正しい──がまた、完全にまちがってもいた。彼の観察は鋭く、事実に即している。教官が訓練生の操縦を誉めたときは次回にへたくそになり、叱ったときは次回にうまくなる。そこまでは正しい。だが、誉めるとへたになり、叱るとうまくなるという推論は、完全に的外れだ。教官が観察したのは「平均への回帰(regression to the mean)」として知られる現象で、この場合には訓練生の出来がランダムに変動しただけなのである。  教官が訓練生を誉めるのは、当然ながら、訓練生が平均をかなり上回る腕前を見せたときだけである。だが訓練生は、たぶんそのときたまたまうまく操縦できただけだから、教官に誉められようがどうしようが、次にはそうはうまくいかない可能性が高い。同様に、教官が訓練生をどなりつけるのは、平均を大幅に下回るほど不出来だったときだけである。したがって教官が何もしなくても、次は多かれ少なかれましになる可能性が高い。つまりベテラン教官は、ランダム事象につきものの変動に因果関係を当てはめたわけである。

バナナ   げろ  一秒か二秒の間にあなたの頭にはさまざまなことが思い浮かんだだろう。

「君たちのところに患者がやって来て、これまで受けた治療はどれもまちがっていた、などと興味をそそる話をすることがあるかもしれない。その患者は、これまで何人もの医者にかかってきたが、どれもだめだったと言い、医者が自分をどう誤解していたかを要領よく説明する。そして、今度の先生を見た瞬間に、これまでとはちがうとわかりました、先生とはフィーリングが合います、先生なら私をわかってくれ、助けてくれるでしょう、などと言う」。そこで教授は一段と声を張り上げて断言した。「そうなったら、その患者を診ようという気さえ起こしてはいけない。そいつを放り出せ。そいつはまずまちがいなくサイコパスだ。サイコパスを助けることはできない」

 システム1の特徴   ・印象、感覚、傾向を形成する。システム2に承認されれば、これらは確信、態度、意志となる。   ・自動的かつ高速に機能する。努力はほとんど伴わない。主体的にコントロールする感覚はない。   ・特定のパターンが感知(探索)されたときに注意するよう、システム2によってプログラム可能である。   ・適切な訓練を積めば、専門技能を磨き、それに基づく反応や直感を形成できる。   ・連想記憶で活性化された観念の整合的なパターンを形成する。

「おしゃれなレストランで隣のテーブルの客を何となく見ていた人が、客の一人がスープを飲んで顔をしかめたことに気づいた。この些細な出来事で、その後に起きるさまざまな出来事の基準が変わってしまう。スープで顔をしかめた客がウェイターと肩が触れただけで怒り出しても、もはや驚くべきことではないし、同じスープを注文した別の客が一口飲んで怒り出しても、意外ではなくなるだろう。こうした出来事はそうひんぱんに起きることではないはずだが、いまやさほど異常ではなくなっている。これは、必ずしもこれらの出来事が事前の予想通りだったからではない。あとの出来事が最初の出来事を想起させ、記憶から呼び出し、それと関連づけて解釈されるから、さほど意外でなく受け止められるのである」

次の二つの質問を含む質問票に答えることが要求された。   あなたは最近どのくらいしあわせですか?   あなたは先月何回デートしましたか?  実験者は答の相関関係に興味をもっており、デートの回数が多い学生は少ない学生よりハッピーだろう、と考えていた。

ものごとは、あなたが考えるほど理屈に合っているわけではない。論理的一貫性の大半は、あなたの頭の中の産物だ

一九六〇年頃、サルノフ・メドニックという若い心理学者が、創造性とは何かを突き止めたと発表した。メドニックのアイデアは、とてもシンプルで説得力がある──「創造性とはすばらしくよく働く連想記憶にほかならない」ということだ。メドニックが考案した遠隔性連想検査(RAT)は、今日でも創造性の研究によく使われている

国民に死を暗示すると、権威主義思想の訴求力が高まることを示唆している

困難な問題に直面したとき、私たちはしばしばより簡単な問題に答えてすます。しかも問題を置き換えたことに、たいていは気づいていない

あの投資責任者が直面した問題、すなわち「私はフォード株を買うべきか」は難しい。だが、もとの問題と関係はあるがより簡単な質問「私はフォードのクルマが好きか」になら、すぐに答は出せる。そしてこの答が選択を決めた。

線の長さが同じかどうか質問されたら、知っていることを答えるだろう。それでもあなたには、下の線のほうが長く見えているのだ

アラン:‥頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い   ベン:‥嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい  もしあなたが大多数の人と同じなら、ベンよりアランのほうがずっと好きだろう

一九八〇年代になると、ある単語に接したときには、その関連語が想起されやすくなるという明らかな変化が認められることがわかった。たとえば、「食べる」という単語を見たり聞いたりした後は、単語の穴埋め問題で〝SO□P〟と出されたときに、SOAP(石けん)よりSOUP(スープ)と答える確率が高まる。言うまでもなく、この逆も起こりうる。たとえば「洗う」という単語を見た後は、SOAPと答える確率が高まる。これを「プライミング効果(priming effect)」と呼び、「食べる」はSOUPのプライム(先行刺激)、「洗う」はSOAPのプライムであると言う(*4)。

私たちは、自分の理解の度合いを過大評価する一方で、多くの事象で偶然が果たす役割を過小評価する傾向にある。自信過剰になるのは、後知恵で過去の確実性を錯覚するからである。

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